時間の経過をテーマに描いた「L’attente／待つ」の連作をはじめ、未発表の旧作を含め
2010年から2012年までに制作した二十数点の油彩作品を展示いたします。

前回「La Resonance／響」と称して音楽家たちを描いた前後から、自分のオリジナルとは
一体何処にあるのかということを以前よりも強く考えるようになりました。

そのなかで、じつはオリジナルとはすでに自分自身に備えあったものではないのか、
昔考えていた題材を今の自分が描いたらどうなるのだろうか、という思いに至り、
この作品展に向けての制作を始めました。

今回出品した作品の多くは二十年ほど前に考えた、もしくは描いた題材を基にしています。



「L’attente／待つ」は学生時代に考えたテーマです。当時の記憶を辿ると、ゴーギャンの
晩年の作品「われわれはどこから来たのか　われわれは何者か　われわれはどこへ行くのか」
という、このタイトルが常に頭の片隅にありました。

我々は個体では百年と生きられないのに、何百年も昔の出来事や、寿命より遥か先の未来にも
容易に想いを巡らせ、不安や危惧、理想や希望を持つことができます。

おそらくこれからも続く人の歴史の通過点で、個の持つ役割とは何か、自分が為すべきこと
とは何か、我々は何処へ向かうのか、またもし次の世代へ繋げられるものがあるとすれば
それは何なのか、そんなことを考えながら昔の自分と向き合って一連の作品を制作しました。

ー今尾則之ー