Past Exhibition

illustration:ケッソクヒデキ
木を知り・木を使い・木を活かす vol.9 東京大学大学院木質材料学研究室展
2025年6月17日(火)~7月1日(火) 11:00AM〜5:00PM / 5610番館正面
「木を知り・木を使い・木を活かす」東京大学大学院木質材料学研究室展は、2010年以来今回で9回目を迎えます。
研究室の学生たちが新学期を迎えて最初に行う五月祭の木質パビリオンの設計コンペティションは「木造を学ぶうえで、まずは自分で木を触りながら色々試して自分で作ってみることが原点」という前任の稲山正弘教授の考えから始まりました。今年からは、木材が元々備えている物性を活かしつつ、新たな性能を付与したり欠点を補ったりした材料の開発研究を進める青木謙治教授の指導のもと、新たな1ページがはじまりました。そのテーマは「国産材204材*を用い、どこかに嵌合(かんごう)接合を持つ架構による屋根付き休憩スペース」です。
コンペティションで選ばれた2作品は、設計者と棟梁(製作担当責任者)を中心に実際のプロセスを1週間程度で想定し、「材料の発注→加工→組み立て作業」を約4週間という短い日程で、全て学生たちの力で行います。完成したパビリオンは弥生キャンパスで展示され、その後、南青山にある5610番館敷地内に移築設置をします。えんじ色の建物に美しく映え、往来からも目を引く美しいパビリオンの展示は、ここ数年では初夏の風物詩になり、定理に裏付けされた構造美を身近に感じていただける機会となっています。
嵌合接合(かんごうせつごう)とは、木材をはめ合わせて接合することで、法隆寺などでも使われている木造建築の骨組みを支える方法で、後世に伝えていきたい日本古来の技術のひとつです。嵌合がテーマになることは今回がはじめてですので、ぜひご注目ください。
いにしえの時代から人間のパートナーである木材を安全に活用するため、木材と木質構造のかけ橋となるべく研究を日々行なっている学生たちのパビリオンをどうぞご覧ください。
今回は、木材利用の裾野を広げるための研究交流として、早稲田大学田中智之研究室の学生たちとの協働による休憩用の木造ベンチも設置する予定です。
*204材=JAS枠組壁工法構造用製材(断面:38mm×89mm、長さ:2,400mm程度の軸材料)、住宅などによく用いられる一般に流通している部材です。